06 今の日本には、「大学生」というブランドは存在しません。少子化 が進む一方で大学の数は増え、いまや2人に1人超が大学生。選り 好みさえしなければ誰でも大学生になれる「大学全入時代」です。バ ブルのころ毎年37万人ほどだった4年制大学の卒業生の数は、いま 58万人前後(文部科学省「学校基本調査」)。ざっと1.5倍に増えま した。 1990年代初めのバブル崩壊後、2000年代になると雇用の規制 緩和が進み、企業は契約社員や派遣社員といった非正社員を増や しました。2008年のリーマン・ショックで世界同時不況が起きると、 経費削減を迫られた企業はさらに正社員の数や採用数を減らし、バ ブル後の「就職氷河期」より厳しいともいわれた「超氷河期」に。正社 員になることが簡単ではない時代になりました。 その後、世界経済は好転。安倍政権の経済政策アベノミクスによ る円安株高などで業績が回復した大企業は、採用数を増やしまし た。企業優位の「買い手市場」だった就活は、2015年卒採用のころ から「売り手市場」に転じ学生優位の状況が続きました。 2020年春に世界を襲った新型コロナウイルスによる感染症拡大 で状況は一変。2019年卒採用で1.88倍と2倍に近づいた大卒求 人倍率は、2022年卒では1.50倍(リクルートワークス研究所調べ) に急落しました。しかし、コロナ禍が落ち着くと景気の回復による人 手不足や、将来の労働力人口が減っていくことを見越した動きにより 企業の採用意欲は再び活発に。2027年卒の大卒求人倍率は1.62 倍となり、人手不足による「売り手市場」が継続、就活の早期化、長 期化が進んでいます。学生だけでなく企業側も採用活動に対する疲 労感が生まれ、新卒生で採用枠を満たせない企業は20代全体を採 用対象にする動きが出てきているのも見逃せません。 就職活動は、インターネットにより大きく様変わりしました。1990 年代以降にネットが普及し、就職情報誌に代わって就職情報サイト (就活ナビ)が必須のツールになりました。企業へのコンタクトがしや すくなり、人気企業には応募が殺到するようになりました。このころ 広まったのがES(エントリーシート)です。志望動機や自己PR、学生 時代に力を入れたこと(通称「ガクチカ」)など各社が独自に設けた設 問に答えるのがESの特徴です。項目数も、一つの設問に対する文字 数も多いため、作成は大変。人気企業には応募が殺到し、ESとSPI などの適性検査を合わせた書類選考でばっさり落とすことも多いた め、学生は常に全力投球を強いられます。インターンシップの選考で もESの提出を求める企業も多く、学生の負担は増しています。 この状況に変化をもたらしつつあるのが、近年爆発的に普及した 生成AIです。文章作成能力や要約能力が飛躍的に伸びた生成AI を活用し、自分のエピソードを入力してガクチカをつくってもらった り、文章を整えてもらったりするなどして、ES作成に役立てる学生が 増えてきました。ESのレベルが全体的に上がり差をつけにくくなった 結果、ESではなく動画を提出させたり、面接やグループワークなど 対面の選考を重視したりする流れが出てきつつあります。選考方法 の多様化に対応しつつ、AIに頼り切らず自分の考えを対面でしっか り話せる力を磨くことが、今後の学生に求められるスキルとなってい くでしょう。 WEBエントリーにより大学による情報格差はなくなったと思われ ていましたが、いまは特定大学の学生をターゲットにした就活サービ スも存在しています。一方で、就活ナビに学生が登録したプロフィー ルを見て、企業側がインターンシップや説明会、選考の案内を直接 学生に送る「スカウト・オファー型」の採用も増えています。インター ネットにより新しい就活サービスが登場するスピードは年々増してお り、こまめな情報収集は欠かせません。就活のスケジュールや選考 内容をSNSで情報収集するのはいまや一般的です。 インターネットが変える就活 近年の就活事情をおさらい
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